立憲民主党の”ゼロコロナ戦略”についての考察

先日、最大野党の立憲民主党新型コロナウイルス政策として「ゼロコロナ戦略」案をまとめました。今日は、このゼロコロナ戦略の実現性と有効性について考察していきたいと思います。

 

1.ゼロコロナは可能なのか

 立憲民主党がいうゼロコロナとは、市中感染をほぼ完全に抑え込んだうえで社会経済活動を回復させるというものです。これについてですが、現実性に乏しく戦略というよりは夢物語感が拭えません。例えば、EU諸国やアメリカでは非常に厳しい外出制限をかけ、ピークが過ぎワクチン接種も日本に先行していますが、直近のデータによるとアメリカで1日約7万人の感染者が出ています。もちろん、今後日本にもワクチンが普及して国民の多くが接種したならば市中感染はほぼ抑えられると思われますが、それまで社会経済活動を動かさないとなると日本の経済・財政がもちません。そもそも、人類が感染症に完全に打ち勝つことは困難であり、長い人類史の中で無数の感染症がありますが完全に封じ込めに成功したのは天然痘のみであります。

 

2.立憲民主党が掲げる政策とは

 次は、そもそも立憲民主党がどんな政策をもってゼロコロナを目指そうとしているのかについてお話していきます。具体的な政策について、NHK報道などによると(1)検査の徹底(2)入国者の水際対策の強化(3)生活困窮者への現金の再給付(4)事業者への支援拡大であります。これから、この4つの政策の実現性・有効性について論じていきたいと思います。

 

3.検査の徹底について

 普通に考えて、検査のこれ以上の徹底は感染防止には無意味で、いたずらに混乱を招くだけだと考えます。確かに、最初にコロナが入ってきた際には必要と思われる人が検査を拒否される事例もありました。しかし、現在では検査が必要かの判断が医師によってもできるようになり、本当に必要な人は検査を受けられる体制が整いました。そして、現状の感染状況を考えたとき、既に感染元を追うことは困難であります。実際、クラスターの追跡を担う保健所の業務はパンク状態であります。そのうえで、検査をさらに拡大するとなると、他人に移すリスクが低いとされている無症状の人が陽性判定を受けて保健所や医療機関に殺到してしまいます。そうなると、保健行政と医療の崩壊を招きかねず、結果として真に治療を必要とする人々に医療が行きわたらないリスクがあります。つまり、検査の徹底は事態を好転させるどころか悪化させてしまうと考えます。本来的に言えば全感染者の隔離は有効だと思われますが、社会的資源には当然限界があるため、ある程度の感染者は覚悟のうえで、病床の確保および国民のマスク着用や大人数での集まりを控えることを徹底してもらうことが最善の策だといえます。ところで昨今、与党自民党議員による夜の会食が問題視されています。国民に感染防止策の徹底を呼び掛けるのは政治家であり、その政治家が身をもって実践しないことには国民の理解は得られません。いまいちど政治家、特に政策決定に力を持つ与党議員にはノブレス・オブリージュを徹底していただきたいと感じます。

 

4.入国者の水際対策強化について

 現在、日本政府は多くの国からの渡航者に対して原則入国拒否の措置をとっています。ただ、今年はオリンピックが開催されると思われ、少なからず海外からの入国があると思います。また、ワクチンが先行する諸外国が入国規制を緩和したなら、経済的な側面で日本もさらなる入国緩和をすることになると思われます。そのため、水際対策強化は図られるべきだと考えます。ゼロコロナ戦略では、10日間の隔離と3度のPCR検査とされていますが、ごもっともな意見だと思われます。ただ、10日間の隔離といえども、入国者も食料や必需品の買い出しにはいくため、どの程度徹底させるのかといった議論は必要になります。また、今後はワクチン接種証明書の積極的活用をして入国者に提示を求める仕組みも必要になると思われます。

 

5.生活困窮者の現金再給付について

 よく、現金10万円給付をもう一回といわれますが、それには反対です。なぜなら、国の財政状況をいたずらに悪化させて将来の増税を招くだけでなく、真に困窮している人にはあまり有効な政策ではないからです。ただ、真の生活困窮者には現金支援はすべきだと考えます。労働政策研究・研修機構の調査によると、パートや派遣労働者の方が影響を多く受けていると考えられます。ただ、全体でみると約6割の人は収入減がなかったと回答しており、3割以上収入が減少した人は男性で約17%、女性で約24%となっております。そのため、こうした真に困窮している人に現金給付をすることが望ましいと考えます。最近、菅内閣総理大臣が「最後には生活保護がある」といって、立憲民主党を含む野党が非難する出来事がありました。しかし私は、生活保護制度を柔軟かつ機動的に運用して真の困窮者を支援すべきだと考えます。例えば、生活保護要件には10万円以上の預貯金がある人は支給不可や最低生活費、子が大学生の場合は世帯分離などの要件があります。こうした要件を一時的に緩和し、生活保護の生活扶助や住宅扶助を受けられるように制度を改正し、加えてコロナ不況による失業者には就業支援をしていく仕組みを整えたほうが良いと思われます。なぜなら、既存制度を応用したほうが実際に支給審査を担当する自治体もノウハウがあり、以前の10万円給付のような混乱が避けられると考えるからです。また、コロナで収入が減少した人には、昨年の年収に影響される住民税などを減免するべきだと考えます。そして、正規雇用でなくても受けることのできる休業支援金の認知度も悪かったため、マスコミも野党も政府批判だけではなく、政府支援策の広報を行って広く国民に伝えていくべきだと考えます。

 

6.事業者への支援拡大について

 現在、コロナ対策として飲食店への時短要請がなされていますが、政府が決めた支援金が低すぎると立憲民主党は非難しています。実際、その支援金というのが緊急事態宣言対象地域に関しては1日最大6万円、対象外だが時短要請を出す場合は1日最大4万円とされています。私は、低すぎるというよりも公平性に欠ける政策だと思います。例えば、緊急事態宣言中の東京都ですが、銀座の一等地で構える飲食店もあれば都下の市町村で地域住民の憩いの場として営業している飲食店もあります。その場合でも両方1日6万円であり、逆に支援金で得する店もあれば、完全に赤字になる店もあります。また、立地によってもランチでもある程度売り上げが見込める店もあれば、新宿の歌舞伎町のように基本的に夜しか人が入らない店もあります。そのため、そうした実情を見たうえで公平な支援金制度を作る必要があります。また、飲食店一律20:00閉店も少々科学的根拠に欠けると思われます。というのも、街に出れば昼間でも居酒屋で大勢でお酒を飲んでいるところもあれば、牛丼のチェーン店のように深夜に営業していても客は仕事帰りのサラリーマンが1人で来店することがメインの店もあります。そうしたわけで、いたずらに支援額を上げるのではなく、業態や家賃相場に合った公平な支援金制度作りを訴えるべきだと思います。加えて、過剰な事業者支援は本来コロナと関係なく倒産するはずの企業を延命することになり、経済学上健全であるとは言えません。

 

7.まとめ

 ここまで見てきた中で、一部ネットで言われるように全ての政策がダメというわけではありませんが、これが「ゼロコロナ戦略」かといわれれば違うと思います。やはり、医療の充実と真の困窮者支援を要として、国民全体の普段の感染対策を呼び掛けたうえでコロナ完全には抑え込まなくても社会経済活動を再開させる「withコロナ」がベターだと思われます。今回も長文となりましたが、最後まで閲覧いただきありがとうございました。

 

※本記事は、単純に政策について考察したものであり、特定の政党を支持または不支持を表明するものでも中傷するものでもありません。

 

※本記事を作成するために参考にさせていただいた文献・サイト

・ゼロコロナ戦略のおおまかな内容を伝えているNHKの報道記事です。

www3.nhk.or.jp

・コロナ無症状患者が他人にウイルスを移す可能性が低いと指摘されております。

omiyaever.jp

・現在の日本の入国管理について

www.mofa.go.jp