日本の子育て政策の在り方について

ご存じのとおり、我が国は急速な少子化が進んでおり、2020年の出生数は過去最少の約87万人となりました。2021年は、新型コロナウイルスによる不況のため更なる出生数の低下が懸念されます。そんな中、与党自民党は今月に入り、子供に関する政策の縦割りの弊害を解消すべく、子ども関連政策を一元的に担当する「子ども家庭庁」の設立を提言しました。今日は、人口減少時代における日本の子ども政策についてお話していきたいと思います。

 

子育てを取り巻く現状

 内閣府の調査によると、生活が苦しい又はやや苦しいと答えた人の割合は約半数となっており、その中でも子育てをしている人でそのように答える人の割合はさらに高いです。また、子どもの相対的貧困率も増加傾向にありOECDの平均を超えています。特にひとり親世帯の家庭は相対的貧困率がさらに高くなり、OECDの国々の中で最下位を記録しています。一方、特に貧困な子育て世帯を支援する政策として、生活保護のほか就学援助や児童扶養手当などがありますが、所得制限が厳しく身を粉にして働いてようやく生活できる世帯に十分な支援が行き届いていない感じがあります。また支援が受けられたとしても、高所得者層の世帯と同じように子どもに習い事を十分にさせてあげることが厳しく、本人に意欲・能力があっても経済的理由で高等教育を受けられない事例も多くなっています。現に、厚生労働省が出したデータによると、生活保護世帯で大学等(専門学校なども含む)に進学した割合は約33%となっており、全体平均の約73%から大きく下回る結果となっています。こうした状況が続くと、貧困の連鎖は続いてしまいます。

 

ではどのような政策をとるべきか

 さて、近年の若い世代が結婚・出産を躊躇してしまう理由として主なものは、やはり経済的側面だと思います。もちろん、価値観・生活スタイルの変化という理由もありますが、正規雇用の割合が大きいことや働いても収入が増えないデフレ時代を考えれば経済的理由は非常に大きいと考えます。そこで今やらなければいけない政策は、やはり子育て費用の支援であります(もちろん雇用・労働環境の改善も必要ですが今回は子育て政策に焦点を当てます)。例えば、教育費と医療費の無償化です。医療費については多くの自治体が中学生まで無償としていますので、今後はそうした施策が財政的に厳しい自治体でも実施できるように国が支援する必要があります。教育費については、やはり高校・大学等の授業料等の無償化が必要だと考えます。特に、現在の日本では高校を卒業していないと非正規に就くことすら厳しいとされるため、高校無償化は速やかに実施すべきです。現在でも、実質的に無償となる制度があり貧困世帯の高校進学率は上がってきていますが、社会に出るためには高校は卒業する必要があるという社会的価値観を考えれば、義務教育と同じく全員が無償で高校に進学できる仕組みを作る必要があると考えます。大学等については、過度な無償化はかえって高等教育の質を低下させる事態になりかねないことから、まずは国公立大学および高等専修学校では授業料は無償とすべきだと考えます。そして国公立・私学を問わず、大学等に進学している子どもがいる家庭は生活保護を支給しないという要件はすぐにでも撤廃するべきです。このように、子どもを育てるのに必要となる費用を支援したうえで、特に貧困な子育て世帯には現金給付を実現すべきです。なぜなら、貧困世帯では生活費が十分になく育ち盛りの子どもに十分な栄養のある食事が摂らせられなかったり、保護者が夜も働き詰めで十分な家庭教育を施すことができなかったりするためです。また、どれだけ教育機関の授業料が無償になったとしても塾等で勉強する時間がなければ意欲があっても進学することは困難になります。

 

財源について

 先ほど申し上げたような施策を実施するためには、当然多額の財源が必要になります。ではどこから税源を捻出するか、それは現行の社会保障制度を改革するほかないと思います。これは現在の高齢者の方々に負担を強いるものになりますが、今の少子高齢化・人口減少を考えれば現在の社会保障制度は近い将来崩壊するリスクが高く、結果として生産世代もどんどん減っていき日本の国力が大きく衰退するのは自明であります。そのためー(1)生活保護世帯を除いて全員の医療費負担を最低でも3割(2)処方箋が不要な薬剤等はすべて自己負担(3)オンライン診療を広く認めて診療報酬を下げる(4)賦課方式の年金を廃止して個人投資を基調とする積立方式の年金制度へ転換―などの施策は検討すべきだと考えます。その上で、生活が極めて厳しい方々には生活保護制度を機動的に運用して対処すべきと考えます。厳しい改革となりますが、先を見据えて将来世代に“豊かな日本”を残すのなら、痛みを伴う改革は必要です。さて少し話が逸れますが、こうした改革は政治決断が必要です。政治家は目先の選挙を気にするのではなく、将来世代に「あの政治家がいてくれたおかげで今の日本がある」と思ってもらえるような政治家を目指すべきです。もちろん、国民に負担を求める改革をするのなら国会議員の歳費削減や定数削減はセットで行う必要があります。近年の政治家を見てみると、不適切な政務活動費の使い方など議員特権の意味を分かっていない政治家も少なくないと思います。また、政治家ではありませんが最近では、一部の高級官僚が不適切な接待を受けていることが分かりました。今こそ公職に就く人間のモラルが問われます。

 

まとめ

 ともあれ、今動かなければ少子化の歯止めはかからず、貧困世帯に十分な支援を行き届けることもできません。今こそ、国民(特に現役世代)が声を上げ、政治家が決断して大きな改革をしていくべきだと思います。大切なのは、将来世代に”豊かな日本“を受け継いでもらい「日本人でよかった」と思ってもらえる基盤を整えることです。今回も長文となりましたが最後まで閲覧いただきありがとうございました。

 

※参考にさせていただいた文献・サイト

 

NHK報道 子ども家庭庁設立の提言について

www3.nhk.or.jp

内閣府 子ども・若者白書

www8.cao.go.jp

厚生労働省 資料:子どもの支援に対する在り方

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000169130_4.pdf