なぜ、今の日本は野党勢力が弱いのか

アメリカやイギリスなどの国々では、2つの大きな政党の勢力がほぼ均衡しており、交互に議会で実権を握る政治形態ができています。しかし日本では、旧民主党自民党に政権を奪還されて以来、自民党が政治の実権を握っています。そこで今回は、なぜ日本では野党勢力が弱いのか考察していきたいと思います。

※①実権とは衆参両院で過半数以上の議席を獲得していることを指します。

 ②本記事でいう自民党とは連立を組む公明党も含んでいます。

 

1.野党第1党について

 さて現在の野党第1党は立憲民主党です。立憲民主党は、旧民主党が分裂などを繰り返した末にできた政党ですが、代表や幹部の名前を見てみるとほとんどが旧民主党で力を持っていた議員です。そして、その立憲民主党は一応、野党第1党なのですが、政党支持率は3月のNHK世論調査で4.5%でした(自民党は35.6%)。これを見て分かるように、日本は野党が非常に弱いです。かといって、与党自民党が国民から絶対的な信用を得られているわけではありません。報道でも分かるように、政権では不適切な接待問題に揺れ、所属議員がコロナ禍にもかかわらず大人数で会食をする問題もありました。ですが、総理大臣を辞めさせろという声があっても、立憲民主党を政権与党にという声はほとんど聞かれません。つまり、現与党はあまり信用していないけど立憲民主党(野党)よりかはマシというのが国民の大多数の意見だといえます。ここからはなぜ、立憲民主党は国民から信用を得られてないのかについてお話していきます。

 

2.過去の失敗の教訓を生かせていない。

 前述したように、立憲民主党で有力とされる議員のほとんどは旧民主党で有力だった議員であります。ご存じのように旧民主党は、2009年に国民から圧倒的な支持を得て政権交代を果たしました。しかし、その約3年後には現職閣僚ですら当選させられないまでに信用が失墜し自民党に政権を再奪還されました。その理由としては、東日本大震災のような未曽有の災害で難しい判断を迫られたことにもありますが、実現不可能なマニュフェストや科学的根拠に基づかない政策判断があります。少し具体例を挙げると、総理の普天間基地の県外移設発言や高速道路完全無料化計画が挙げられます。特に普天間基地の県外移設発言は思いつきのような発言であり、結果的に国と沖縄県の対立をさらに深め県民の不信を招きました。そして、その当時の民主党幹部が現在の立憲民主党幹部陣です。これでは、多くの国民が立憲民主党は最悪だった頃の旧民主党と同じだと認識してしまいます。そして、立憲民主党幹部陣から旧民主党の失敗を検証し失敗を繰り返さないという姿勢は感じられません。その証拠に現在の立憲民主党は政策立案能力が乏しく、終始政権批判をするのみで“我々ならこういう政策をやる”という未来の話がありません。そうしたビジョンなしに「政権を奪還する」なんて言われても空虚な叫びであります。ちなみに先日、立憲民主党は“ゼロコロナ戦略”なる政策提言をしましたが、コロナをゼロにするのは困難であり中身も科学的根拠に欠けるものでありました。実際、最大の支持団体である連合の幹部からも苦言が呈されました。

 

3.国民の関心のなさ

 立憲民主党が政策立案能力に乏しいのは、幹部陣の指導力のなさや全体の危機感のなさ・組織の硬直性など挙げればキリがないですが、その一つには国民の関心のなさが挙げられます。関心のなさというよりマスコミの質の悪さが原因かもしれませんが、特定の政治家の失言や根拠のない疑惑はパッと取り上げるにもかかわらず、本当に日本が直面している問題―例えば少子高齢化社会保障改革・中国の台頭―にはあまり触れられません。先日の東京五輪組織委員会会長の失言の際にも、多くのマスコミや一部の国民は会長を辞職させれば満足といったように、失言の裏にある日本的な伝統的価値観と女性の社会進出という本質を突く議論はほとんどありません。実際、会長が変わったことで組織や日本社会がどう変わったのかといった報道は皆無です。もちろん、全てがマスコミのせいではなく一般国民がスキャンダル報道を望む傾向にあるため、結果的にマスコミもスキャンダル記事ばかりを書くようになったとも言えます。野党の中でも対案を出している維新の党や国民民主党よりも威勢がいいだけで中身がない立憲民主党共産党の方が注目されやすい原因もそこにあります。

 

4.数合わせだけの戦略

 最後のテーマですが、立憲民主党に限らず野党が議席を獲得するために取る戦略として“野党共闘”があります。これは、主に衆議院議員選挙の際に同一選挙区で野党同士がつぶしあわないようにするために候補者を一本化するものです。もちろん、政党とは意見が違ったとしても究極の目標は“国をよりよくする”というものであるため連携できるところは政党を超えて連携すべきだと思います。しかし、ここ最近の野党共闘は単に自民党議席減少を狙っただけの場当たり的な将来ビジョンがないものだと感じます。その証拠として、共闘する政党として共産党が入っています。ご存じのように共産党は、自衛隊反対を掲げる政党で、今でこそ純粋な共産主義ではないもののかなりの社会主義政党であることは間違いありません。ですが、立憲民主党は左派政党といっても自衛隊反対とまでは言っていません。そうなると、仮に共闘の末に細川護熙内閣のような超連立政権を誕生させたとしても内輪もめで政治が混乱することは目に見えています。このため、数合わせ的でビジョンがないことは明白であるといえ、その証拠に過去複数の選挙で野党共闘を行いマスコミにも宣伝しましたが、野党の議席数はそれほど伸びていません。

 

5.まとめ

 野党がある程度強くなければ与党にも悪い意味での余裕が生まれ、政治・行政に緊張が生まれません。そうなれば、今現在日本に押し寄せる危機的課題に対処することができず衰退の一途をたどってしまいます。そうならないためにも我々国民が、本質的な問題に関心を持つ必要があります。そうすれば、マスコミもそうした問題に焦点も当てた報道にシフトし、政治にも緊張を与えることができます。今回も長文となりましたが最後までご覧いただきありがとうございました。

 

※参考にさせていただいた文献・サイト

・2021年3月のNHK世論調査

www.nhk.or.jp