なぜ、今の日本は野党勢力が弱いのか

アメリカやイギリスなどの国々では、2つの大きな政党の勢力がほぼ均衡しており、交互に議会で実権を握る政治形態ができています。しかし日本では、旧民主党自民党に政権を奪還されて以来、自民党が政治の実権を握っています。そこで今回は、なぜ日本では野党勢力が弱いのか考察していきたいと思います。

※①実権とは衆参両院で過半数以上の議席を獲得していることを指します。

 ②本記事でいう自民党とは連立を組む公明党も含んでいます。

 

1.野党第1党について

 さて現在の野党第1党は立憲民主党です。立憲民主党は、旧民主党が分裂などを繰り返した末にできた政党ですが、代表や幹部の名前を見てみるとほとんどが旧民主党で力を持っていた議員です。そして、その立憲民主党は一応、野党第1党なのですが、政党支持率は3月のNHK世論調査で4.5%でした(自民党は35.6%)。これを見て分かるように、日本は野党が非常に弱いです。かといって、与党自民党が国民から絶対的な信用を得られているわけではありません。報道でも分かるように、政権では不適切な接待問題に揺れ、所属議員がコロナ禍にもかかわらず大人数で会食をする問題もありました。ですが、総理大臣を辞めさせろという声があっても、立憲民主党を政権与党にという声はほとんど聞かれません。つまり、現与党はあまり信用していないけど立憲民主党(野党)よりかはマシというのが国民の大多数の意見だといえます。ここからはなぜ、立憲民主党は国民から信用を得られてないのかについてお話していきます。

 

2.過去の失敗の教訓を生かせていない。

 前述したように、立憲民主党で有力とされる議員のほとんどは旧民主党で有力だった議員であります。ご存じのように旧民主党は、2009年に国民から圧倒的な支持を得て政権交代を果たしました。しかし、その約3年後には現職閣僚ですら当選させられないまでに信用が失墜し自民党に政権を再奪還されました。その理由としては、東日本大震災のような未曽有の災害で難しい判断を迫られたことにもありますが、実現不可能なマニュフェストや科学的根拠に基づかない政策判断があります。少し具体例を挙げると、総理の普天間基地の県外移設発言や高速道路完全無料化計画が挙げられます。特に普天間基地の県外移設発言は思いつきのような発言であり、結果的に国と沖縄県の対立をさらに深め県民の不信を招きました。そして、その当時の民主党幹部が現在の立憲民主党幹部陣です。これでは、多くの国民が立憲民主党は最悪だった頃の旧民主党と同じだと認識してしまいます。そして、立憲民主党幹部陣から旧民主党の失敗を検証し失敗を繰り返さないという姿勢は感じられません。その証拠に現在の立憲民主党は政策立案能力が乏しく、終始政権批判をするのみで“我々ならこういう政策をやる”という未来の話がありません。そうしたビジョンなしに「政権を奪還する」なんて言われても空虚な叫びであります。ちなみに先日、立憲民主党は“ゼロコロナ戦略”なる政策提言をしましたが、コロナをゼロにするのは困難であり中身も科学的根拠に欠けるものでありました。実際、最大の支持団体である連合の幹部からも苦言が呈されました。

 

3.国民の関心のなさ

 立憲民主党が政策立案能力に乏しいのは、幹部陣の指導力のなさや全体の危機感のなさ・組織の硬直性など挙げればキリがないですが、その一つには国民の関心のなさが挙げられます。関心のなさというよりマスコミの質の悪さが原因かもしれませんが、特定の政治家の失言や根拠のない疑惑はパッと取り上げるにもかかわらず、本当に日本が直面している問題―例えば少子高齢化社会保障改革・中国の台頭―にはあまり触れられません。先日の東京五輪組織委員会会長の失言の際にも、多くのマスコミや一部の国民は会長を辞職させれば満足といったように、失言の裏にある日本的な伝統的価値観と女性の社会進出という本質を突く議論はほとんどありません。実際、会長が変わったことで組織や日本社会がどう変わったのかといった報道は皆無です。もちろん、全てがマスコミのせいではなく一般国民がスキャンダル報道を望む傾向にあるため、結果的にマスコミもスキャンダル記事ばかりを書くようになったとも言えます。野党の中でも対案を出している維新の党や国民民主党よりも威勢がいいだけで中身がない立憲民主党共産党の方が注目されやすい原因もそこにあります。

 

4.数合わせだけの戦略

 最後のテーマですが、立憲民主党に限らず野党が議席を獲得するために取る戦略として“野党共闘”があります。これは、主に衆議院議員選挙の際に同一選挙区で野党同士がつぶしあわないようにするために候補者を一本化するものです。もちろん、政党とは意見が違ったとしても究極の目標は“国をよりよくする”というものであるため連携できるところは政党を超えて連携すべきだと思います。しかし、ここ最近の野党共闘は単に自民党議席減少を狙っただけの場当たり的な将来ビジョンがないものだと感じます。その証拠として、共闘する政党として共産党が入っています。ご存じのように共産党は、自衛隊反対を掲げる政党で、今でこそ純粋な共産主義ではないもののかなりの社会主義政党であることは間違いありません。ですが、立憲民主党は左派政党といっても自衛隊反対とまでは言っていません。そうなると、仮に共闘の末に細川護熙内閣のような超連立政権を誕生させたとしても内輪もめで政治が混乱することは目に見えています。このため、数合わせ的でビジョンがないことは明白であるといえ、その証拠に過去複数の選挙で野党共闘を行いマスコミにも宣伝しましたが、野党の議席数はそれほど伸びていません。

 

5.まとめ

 野党がある程度強くなければ与党にも悪い意味での余裕が生まれ、政治・行政に緊張が生まれません。そうなれば、今現在日本に押し寄せる危機的課題に対処することができず衰退の一途をたどってしまいます。そうならないためにも我々国民が、本質的な問題に関心を持つ必要があります。そうすれば、マスコミもそうした問題に焦点も当てた報道にシフトし、政治にも緊張を与えることができます。今回も長文となりましたが最後までご覧いただきありがとうございました。

 

※参考にさせていただいた文献・サイト

・2021年3月のNHK世論調査

www.nhk.or.jp

日本の子育て政策の在り方について

ご存じのとおり、我が国は急速な少子化が進んでおり、2020年の出生数は過去最少の約87万人となりました。2021年は、新型コロナウイルスによる不況のため更なる出生数の低下が懸念されます。そんな中、与党自民党は今月に入り、子供に関する政策の縦割りの弊害を解消すべく、子ども関連政策を一元的に担当する「子ども家庭庁」の設立を提言しました。今日は、人口減少時代における日本の子ども政策についてお話していきたいと思います。

 

子育てを取り巻く現状

 内閣府の調査によると、生活が苦しい又はやや苦しいと答えた人の割合は約半数となっており、その中でも子育てをしている人でそのように答える人の割合はさらに高いです。また、子どもの相対的貧困率も増加傾向にありOECDの平均を超えています。特にひとり親世帯の家庭は相対的貧困率がさらに高くなり、OECDの国々の中で最下位を記録しています。一方、特に貧困な子育て世帯を支援する政策として、生活保護のほか就学援助や児童扶養手当などがありますが、所得制限が厳しく身を粉にして働いてようやく生活できる世帯に十分な支援が行き届いていない感じがあります。また支援が受けられたとしても、高所得者層の世帯と同じように子どもに習い事を十分にさせてあげることが厳しく、本人に意欲・能力があっても経済的理由で高等教育を受けられない事例も多くなっています。現に、厚生労働省が出したデータによると、生活保護世帯で大学等(専門学校なども含む)に進学した割合は約33%となっており、全体平均の約73%から大きく下回る結果となっています。こうした状況が続くと、貧困の連鎖は続いてしまいます。

 

ではどのような政策をとるべきか

 さて、近年の若い世代が結婚・出産を躊躇してしまう理由として主なものは、やはり経済的側面だと思います。もちろん、価値観・生活スタイルの変化という理由もありますが、正規雇用の割合が大きいことや働いても収入が増えないデフレ時代を考えれば経済的理由は非常に大きいと考えます。そこで今やらなければいけない政策は、やはり子育て費用の支援であります(もちろん雇用・労働環境の改善も必要ですが今回は子育て政策に焦点を当てます)。例えば、教育費と医療費の無償化です。医療費については多くの自治体が中学生まで無償としていますので、今後はそうした施策が財政的に厳しい自治体でも実施できるように国が支援する必要があります。教育費については、やはり高校・大学等の授業料等の無償化が必要だと考えます。特に、現在の日本では高校を卒業していないと非正規に就くことすら厳しいとされるため、高校無償化は速やかに実施すべきです。現在でも、実質的に無償となる制度があり貧困世帯の高校進学率は上がってきていますが、社会に出るためには高校は卒業する必要があるという社会的価値観を考えれば、義務教育と同じく全員が無償で高校に進学できる仕組みを作る必要があると考えます。大学等については、過度な無償化はかえって高等教育の質を低下させる事態になりかねないことから、まずは国公立大学および高等専修学校では授業料は無償とすべきだと考えます。そして国公立・私学を問わず、大学等に進学している子どもがいる家庭は生活保護を支給しないという要件はすぐにでも撤廃するべきです。このように、子どもを育てるのに必要となる費用を支援したうえで、特に貧困な子育て世帯には現金給付を実現すべきです。なぜなら、貧困世帯では生活費が十分になく育ち盛りの子どもに十分な栄養のある食事が摂らせられなかったり、保護者が夜も働き詰めで十分な家庭教育を施すことができなかったりするためです。また、どれだけ教育機関の授業料が無償になったとしても塾等で勉強する時間がなければ意欲があっても進学することは困難になります。

 

財源について

 先ほど申し上げたような施策を実施するためには、当然多額の財源が必要になります。ではどこから税源を捻出するか、それは現行の社会保障制度を改革するほかないと思います。これは現在の高齢者の方々に負担を強いるものになりますが、今の少子高齢化・人口減少を考えれば現在の社会保障制度は近い将来崩壊するリスクが高く、結果として生産世代もどんどん減っていき日本の国力が大きく衰退するのは自明であります。そのためー(1)生活保護世帯を除いて全員の医療費負担を最低でも3割(2)処方箋が不要な薬剤等はすべて自己負担(3)オンライン診療を広く認めて診療報酬を下げる(4)賦課方式の年金を廃止して個人投資を基調とする積立方式の年金制度へ転換―などの施策は検討すべきだと考えます。その上で、生活が極めて厳しい方々には生活保護制度を機動的に運用して対処すべきと考えます。厳しい改革となりますが、先を見据えて将来世代に“豊かな日本”を残すのなら、痛みを伴う改革は必要です。さて少し話が逸れますが、こうした改革は政治決断が必要です。政治家は目先の選挙を気にするのではなく、将来世代に「あの政治家がいてくれたおかげで今の日本がある」と思ってもらえるような政治家を目指すべきです。もちろん、国民に負担を求める改革をするのなら国会議員の歳費削減や定数削減はセットで行う必要があります。近年の政治家を見てみると、不適切な政務活動費の使い方など議員特権の意味を分かっていない政治家も少なくないと思います。また、政治家ではありませんが最近では、一部の高級官僚が不適切な接待を受けていることが分かりました。今こそ公職に就く人間のモラルが問われます。

 

まとめ

 ともあれ、今動かなければ少子化の歯止めはかからず、貧困世帯に十分な支援を行き届けることもできません。今こそ、国民(特に現役世代)が声を上げ、政治家が決断して大きな改革をしていくべきだと思います。大切なのは、将来世代に”豊かな日本“を受け継いでもらい「日本人でよかった」と思ってもらえる基盤を整えることです。今回も長文となりましたが最後まで閲覧いただきありがとうございました。

 

※参考にさせていただいた文献・サイト

 

NHK報道 子ども家庭庁設立の提言について

www3.nhk.or.jp

内閣府 子ども・若者白書

www8.cao.go.jp

厚生労働省 資料:子どもの支援に対する在り方

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000169130_4.pdf

現代人は、スマホとどう付き合っていくべきなのか

今日、スマートフォン(以下、スマホ)は我々の生活になくてはならない必需品であります。今日は、スマホの功罪をお話しするとともに、我々はスマホとどのように付き合っていくべきなのか考えていこうと思います。

 

1.現状のスマホ普及率について

 前提としてまず、現在(2019年時点)の日本のスマホ世帯保有率は、令和2年の情報通信白書によると83.4%(個人保有率は67.6%)となっています。情報通信白書でスマホの世帯保有率の統計が始まったのは2010年であり、その時点では世帯保有率が9.7%でした。このことからも分かるように、たった10年でほとんどの世帯で少なくとも1台はスマホを持つようになったわけであります。ここまでスマホが普及したわけは、その便利さにあります。発売当初は“新しいモノ好き”の人しか買わない嗜好品でしたが、パソコンのように手軽にインターネットに接続でき、どこにいてもネットショッピングや天気などの検索、さらには金融商品の売買まで可能になったことから、一般消費者に急速に普及しました。そして現在、LINEなどのコミュニケーションアプリやTwitterFacebookなどのSNSは特に若い世代には欠かせない存在になり、スマホは見事に生活必需品の仲間入りを果たしたわけであります。

 

2.スマホのメリット

 先ほども少し述べましたが、スマホのメリットは何といっても利便性にあります。例えばナビアプリがあれば、基本的に初めて行くような場所でも乗換駅や歩く方向を案内してくれるため道に迷わなくて済みます。また、ネットショッピングができれば、出先で購入するものを思い出せば忘れないうちに購入できますし、投資をする人であればチャートをリアルタイムで確認でき、売買もスマホがインターネットにつながっていれば可能となります。また、LINEはメールよりも手軽に送信することができ、インターネットがあれば無料で使える電話機能も備えています。このようにスマホは、生活の利便性向上とコミュニケーションの効率化に寄与しています。

 

3.スマホのデメリット

 このように便利なスマホですが、リスクも多いとされています。大きなリスクとして挙げられるのは、思考力の低下と依存性であります。例えば、インターネットが普及していなかった時代と比べて、考える力が衰えてきたという経験はありませんでしょうか?もちろん、思考力の低下は年齢によるものもありますが、インターネットが普及したことで分からないことがあればすぐに検索してしまうといった機会が増えたはずです。こうした機会が増えると、思考をつかさどる脳の器官が自然と使われにくくなります。そうなると、運動不足の人が体力低下するのと同様に、思考力も低下してしまいます。人間の思考力は、他の動物にはない唯一無二のものであり、思考して様々な道具を作ることで人間は繁栄してきました。極端で乱暴な言い方になりますが、その人間が思考力を失えば人類に未来はなくなると思います。そして、もう一つのリスクが依存性です。電車に乗る人ならご存じのとおり、乗客のほとんどがスマホを見ている光景は日常となりました。MMD研究所の調査によると、10~50代の男女にスマホの1日の平均利用時間を聞いたところ、全体で50%以上の人が3時間以上利用していると答えました。そして、10代女性に限れば約33%の人が7時間以上スマホを触っているという結果が出ています。おそらく10代の方の多くは学生であると考えられるため、学校と睡眠・食事等の時間を除くとほとんどすべての時間をスマホに充てているのだと思います。そして、10代の方が金融商品の取引をしているとはあまり考えられないので、スマホを触っているのはSNSかゲームをするためだと考えられます。特に女性に限れば、テレビなどで報じられている通りSNSの利用時間が多いと考えられます。SNSは自分の考えが外部に簡単に発信できるというメリットがある一方で、自分が投稿したものに“いいね”のような評価がつくことから、より多くの人から評価を貰おうと必死になってしまうリスクがあります。そして若い世代ほど承認欲求が高いとされているため、SNSにのめりこんでしまう可能性が高いのです。その結果が、先ほど紹介した調査結果に表れているのだと考えます。

 

スマホが人間の脳に与える影響やスマホ(SNS)との付き合い方について一般にも分かりやすく伝えているおススメの一冊です。

スマホ脳(新潮新書)

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4.スマホとの正しい付き合い方

 インターネットもSNSも本来便利なものであり、正しく付き合うことでリスクを最大限減らして利便性を享受できる道具として使えます。例えば、先ほどの思考力低下の問題だと難しいタスクに取り組むとき、まずは自分の考え・仮説を紙に書いてみる、その後でその考え・仮説を根拠づけるためにインターネットを使ってデータを集めることを意識してはどうでしょうか?そしてSNSの問題には、無目的的にSNSを開かないことを意識する必要があります。なぜなら、SNSはそれまでの自分の閲覧履歴と膨大な全利用者データからその人が興味あると思われる投稿・広告が出やすいように設計されています。なので、無目的的に時間も決めずに使用していると、ついつい長時間利用してしまいます。そして、思い切ってSNSやゲームの通知を切っておくことも効果的です(私も実践してみた結果、どうでもいい通知でスマホを開くことがなくなりました)。重要な連絡であれば、直接電話してくるかメールで来るわけですから、そうした通知を切っても問題ありません。したがって、スマホ(インターネット・SNS)とはほどよく距離をとって、生活の利便・効率化のために必要なツールは使っていく、そうすることでリスクを抑えたうえで利便性は享受するという豊かな生活を送ることができると考えます。長文となりましたが、最後までご覧いただきましてありがとうございました。

 

※参考にさせていただいた資料等について

 

総務省スマホやインターネットの普及率に関する統計です。

www.soumu.go.jp

 

MMD研究所:スマホの利用時間に関する調査結果です。

mmdlabo.jp

立憲民主党の”ゼロコロナ戦略”についての考察

先日、最大野党の立憲民主党新型コロナウイルス政策として「ゼロコロナ戦略」案をまとめました。今日は、このゼロコロナ戦略の実現性と有効性について考察していきたいと思います。

 

1.ゼロコロナは可能なのか

 立憲民主党がいうゼロコロナとは、市中感染をほぼ完全に抑え込んだうえで社会経済活動を回復させるというものです。これについてですが、現実性に乏しく戦略というよりは夢物語感が拭えません。例えば、EU諸国やアメリカでは非常に厳しい外出制限をかけ、ピークが過ぎワクチン接種も日本に先行していますが、直近のデータによるとアメリカで1日約7万人の感染者が出ています。もちろん、今後日本にもワクチンが普及して国民の多くが接種したならば市中感染はほぼ抑えられると思われますが、それまで社会経済活動を動かさないとなると日本の経済・財政がもちません。そもそも、人類が感染症に完全に打ち勝つことは困難であり、長い人類史の中で無数の感染症がありますが完全に封じ込めに成功したのは天然痘のみであります。

 

2.立憲民主党が掲げる政策とは

 次は、そもそも立憲民主党がどんな政策をもってゼロコロナを目指そうとしているのかについてお話していきます。具体的な政策について、NHK報道などによると(1)検査の徹底(2)入国者の水際対策の強化(3)生活困窮者への現金の再給付(4)事業者への支援拡大であります。これから、この4つの政策の実現性・有効性について論じていきたいと思います。

 

3.検査の徹底について

 普通に考えて、検査のこれ以上の徹底は感染防止には無意味で、いたずらに混乱を招くだけだと考えます。確かに、最初にコロナが入ってきた際には必要と思われる人が検査を拒否される事例もありました。しかし、現在では検査が必要かの判断が医師によってもできるようになり、本当に必要な人は検査を受けられる体制が整いました。そして、現状の感染状況を考えたとき、既に感染元を追うことは困難であります。実際、クラスターの追跡を担う保健所の業務はパンク状態であります。そのうえで、検査をさらに拡大するとなると、他人に移すリスクが低いとされている無症状の人が陽性判定を受けて保健所や医療機関に殺到してしまいます。そうなると、保健行政と医療の崩壊を招きかねず、結果として真に治療を必要とする人々に医療が行きわたらないリスクがあります。つまり、検査の徹底は事態を好転させるどころか悪化させてしまうと考えます。本来的に言えば全感染者の隔離は有効だと思われますが、社会的資源には当然限界があるため、ある程度の感染者は覚悟のうえで、病床の確保および国民のマスク着用や大人数での集まりを控えることを徹底してもらうことが最善の策だといえます。ところで昨今、与党自民党議員による夜の会食が問題視されています。国民に感染防止策の徹底を呼び掛けるのは政治家であり、その政治家が身をもって実践しないことには国民の理解は得られません。いまいちど政治家、特に政策決定に力を持つ与党議員にはノブレス・オブリージュを徹底していただきたいと感じます。

 

4.入国者の水際対策強化について

 現在、日本政府は多くの国からの渡航者に対して原則入国拒否の措置をとっています。ただ、今年はオリンピックが開催されると思われ、少なからず海外からの入国があると思います。また、ワクチンが先行する諸外国が入国規制を緩和したなら、経済的な側面で日本もさらなる入国緩和をすることになると思われます。そのため、水際対策強化は図られるべきだと考えます。ゼロコロナ戦略では、10日間の隔離と3度のPCR検査とされていますが、ごもっともな意見だと思われます。ただ、10日間の隔離といえども、入国者も食料や必需品の買い出しにはいくため、どの程度徹底させるのかといった議論は必要になります。また、今後はワクチン接種証明書の積極的活用をして入国者に提示を求める仕組みも必要になると思われます。

 

5.生活困窮者の現金再給付について

 よく、現金10万円給付をもう一回といわれますが、それには反対です。なぜなら、国の財政状況をいたずらに悪化させて将来の増税を招くだけでなく、真に困窮している人にはあまり有効な政策ではないからです。ただ、真の生活困窮者には現金支援はすべきだと考えます。労働政策研究・研修機構の調査によると、パートや派遣労働者の方が影響を多く受けていると考えられます。ただ、全体でみると約6割の人は収入減がなかったと回答しており、3割以上収入が減少した人は男性で約17%、女性で約24%となっております。そのため、こうした真に困窮している人に現金給付をすることが望ましいと考えます。最近、菅内閣総理大臣が「最後には生活保護がある」といって、立憲民主党を含む野党が非難する出来事がありました。しかし私は、生活保護制度を柔軟かつ機動的に運用して真の困窮者を支援すべきだと考えます。例えば、生活保護要件には10万円以上の預貯金がある人は支給不可や最低生活費、子が大学生の場合は世帯分離などの要件があります。こうした要件を一時的に緩和し、生活保護の生活扶助や住宅扶助を受けられるように制度を改正し、加えてコロナ不況による失業者には就業支援をしていく仕組みを整えたほうが良いと思われます。なぜなら、既存制度を応用したほうが実際に支給審査を担当する自治体もノウハウがあり、以前の10万円給付のような混乱が避けられると考えるからです。また、コロナで収入が減少した人には、昨年の年収に影響される住民税などを減免するべきだと考えます。そして、正規雇用でなくても受けることのできる休業支援金の認知度も悪かったため、マスコミも野党も政府批判だけではなく、政府支援策の広報を行って広く国民に伝えていくべきだと考えます。

 

6.事業者への支援拡大について

 現在、コロナ対策として飲食店への時短要請がなされていますが、政府が決めた支援金が低すぎると立憲民主党は非難しています。実際、その支援金というのが緊急事態宣言対象地域に関しては1日最大6万円、対象外だが時短要請を出す場合は1日最大4万円とされています。私は、低すぎるというよりも公平性に欠ける政策だと思います。例えば、緊急事態宣言中の東京都ですが、銀座の一等地で構える飲食店もあれば都下の市町村で地域住民の憩いの場として営業している飲食店もあります。その場合でも両方1日6万円であり、逆に支援金で得する店もあれば、完全に赤字になる店もあります。また、立地によってもランチでもある程度売り上げが見込める店もあれば、新宿の歌舞伎町のように基本的に夜しか人が入らない店もあります。そのため、そうした実情を見たうえで公平な支援金制度を作る必要があります。また、飲食店一律20:00閉店も少々科学的根拠に欠けると思われます。というのも、街に出れば昼間でも居酒屋で大勢でお酒を飲んでいるところもあれば、牛丼のチェーン店のように深夜に営業していても客は仕事帰りのサラリーマンが1人で来店することがメインの店もあります。そうしたわけで、いたずらに支援額を上げるのではなく、業態や家賃相場に合った公平な支援金制度作りを訴えるべきだと思います。加えて、過剰な事業者支援は本来コロナと関係なく倒産するはずの企業を延命することになり、経済学上健全であるとは言えません。

 

7.まとめ

 ここまで見てきた中で、一部ネットで言われるように全ての政策がダメというわけではありませんが、これが「ゼロコロナ戦略」かといわれれば違うと思います。やはり、医療の充実と真の困窮者支援を要として、国民全体の普段の感染対策を呼び掛けたうえでコロナ完全には抑え込まなくても社会経済活動を再開させる「withコロナ」がベターだと思われます。今回も長文となりましたが、最後まで閲覧いただきありがとうございました。

 

※本記事は、単純に政策について考察したものであり、特定の政党を支持または不支持を表明するものでも中傷するものでもありません。

 

※本記事を作成するために参考にさせていただいた文献・サイト

・ゼロコロナ戦略のおおまかな内容を伝えているNHKの報道記事です。

www3.nhk.or.jp

・コロナ無症状患者が他人にウイルスを移す可能性が低いと指摘されております。

omiyaever.jp

・現在の日本の入国管理について

www.mofa.go.jp

日本の金融教育の現状と拡充の必要性~人生におけるお金との関わり方~

1.はじめに

 現代社会で生きる私たちにとって、お金との関係は切り離せません。しかし、日本ではこの「お金」について子供のときから学ぶ機会が少ないように感じられます。例えば「子供はお金に口出ししてはいけません」と少年時代に言われた方も多いのではないでしょうか。そうした中で、小・中・高等学校の時代に「お金」についてきちんと学ぶ機会も少ないように感じられます。実際、OECDが実施した金融リテラシーに関する調査でも日本の順位は芳しくありませんでした。そして現実問題、マルチ商法や詐欺に引っかかる人、投資は単なるギャンブルと誤解されている方も多いです。

 

2.金融教育の現状

 現在、OECDも金融教育の重要性を訴え、日本政府も金融教育の重要性を認識しています。また、日本の現在の社会保障では大学卒業後に就職して、貯蓄をして60歳になれば貯蓄と退職金・年金で生活するという従来型の人生設計が崩れかけています。そのため、“自らのお金を自らで創る”という考えが必要になり、政府も投資を推進するに至っているわけであります。しかし現在、日本銀行が出した資料によると若年層ほど金融教育を受けた人の割合は増えてきているものの依然として半数以上の人は金融教育を受けていないと答えています。このことからも、日本の金融教育の拡充は道半ばだといえます。

 

3.そもそも何故、金融教育が必要なのか

 私が思うに、日本で金融教育が必要とされる理由は2つあると思います。1つは、マルチ商法や投資詐欺の被害を減らすためであります。前述しているように、日本では「子供がお金のことに口出しするなんて」という文化があると考えられます。しかし高校を卒業して大学または社会に出て20歳にもなると、たちまち自由に経済活動ができ責任ある立場になります。そして、悪意ある人間が学生などの知識不足を利用して、法律の網をくぐり抜けて高額な商品などを売りつける事例が多発しています。一時期、学生をターゲットにしたマルチ商法がはやった時代がありましたが、現在もそうした商法に引っかかる人は多いです。実際、SNSを見るとー全てではありませんがー怪しげな情報商材を販売しているアカウントが多数存在します。2つ目は、先ほど述べた「自分のお金は自分で創る」という考えを浸透させるためです。現在日本は急激な少子高齢化・グローバル時代に突入しており、従来の終身雇用・年金制度・貯蓄による人生設計が崩壊しかけています。そのため、個人年金や投資による資産・人生設計が必要になってきています。しかし、投資について正しい理解をしている人は少なく、NISA等の税制的に有利な制度も詳しく知っている人は少ないです。実際、マイボイスコム株式会社が行った調査によると、2020年4月現在NISAについて「詳しい内容まで知っている」と答えた人は約23%にとどまっており、これは2015年4月時点の調査結果とほとんど変わっていません。これに対してアメリカでは、投資や個人年金をしている人が多く、老後の生活に余裕を持っている人が多いと考えられています。もちろんこの差は、国民性もありますが金融教育の不足もあるように感じられます。

 

4.金融教育で教える内容

 現在の金融教育としては、単発的な授業と社会科系教科の中に経済の仕組みを学ぶものがあると思います。私は、この単発的な授業の拡充が必要だと思います。具体的には、2週間に一回くらいのペースで、契約や借金、投資、税などあらゆる「お金」に関する知識を継続的に義務教育の段階から教える仕組みが必要だと思います。また、学生側に興味を持ってもらうためにディスカッション方式や外部講師の積極的な活用が必要だと思います。

 

5.まとめ

 結論として、資本主義経済社会で生きる以上は「お金」との関係は避けられません。そして、20歳を超えると経済活動は完全に自由になります。そのため、お金について正しい理解をしていないと悪意ある人間につけ込まれるリスクが高まります。何より、これからの時代は「自分のお金は自分で創る」という考えが必要でそのための土台として、早いうちからの金融教育は必要であります。今回も長文を読んでいただきまして有り難うございました。

 

※記事を作成するのにあたって参考にさせていただいた文献・サイト

 

・NISA制度に関するアンケート調査

prtimes.jp

・金融リテラシークイズ

www.shiruporuto.jp

・退職後の生活に関する日米比較の調査(2004年2月24日 日興コーディアル証券株式会社)

https://www.smbcnikko.co.jp/news/release/2004/pdf/040224.pdf

・金融リテラシー~人生を豊かにする「お金」の知恵~(2020年2月14日 日本銀行

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2020/data/ko200214a1.pdf

核禁止条約の実効性と日本国参加の是非について

令和3年1月22日、核兵器の開発・使用・保有を禁止する“核兵器禁止条約”が発効しました。しかし、この条約には全ての核保有国は加入しておらず、唯一の被爆国である日本も加入していません。今回は、この条約の実効性や日本は加入すべきなのかについてお話ししていこうと思います。

 

1.核兵器禁止条約とは

 核兵器禁止条約とは、その名の通り核兵器の使用・保有・開発を例外なく禁止する条約です。これまでも核軍縮は進められてきていますが、これまでの国際法(条約)はあくまで新規の開発禁止や実験禁止に重きが置かれており、現保有国(主に第二次世界大戦戦勝国)の核兵器保有そのものは認められています。この条約の発効には2017年にノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が大きな役割を果たしました。ICANは、スイスのジュネーブに拠点を置く組織で、世界各国のNGOなどの団体が集まって構成されています。そして、ICANは国家機関によるキャンペーンではありませんでしたが、様々な国の政府や国民に核兵器根絶の必要性を訴え続けた結果、国際法規である条約となって実を結んだわけであります。令和3年1月22日現在、100を超える国や地域が条約に署名・批准を進めており、一見すると核のない世界に前進したと感じられます。しかし、肝心の核保有国は全て不参加、先進国である日本や多くのNATO加盟国も条約参加に否定的な立場をとっています

 

2.日本の早期参加の是非

 確かに、核兵器禁止条約は理想とする世界の実現に向けた画期的な条約であるといえ、唯一の被爆国である日本も参加する方がいいように思えます。しかし、日本の安全保障政策を考えたとき、核兵器禁止条約は理想的すぎて現実的ではないのです。「日本は核兵器を持たないし持てない国だから条約に参加しても問題ない」と思われる方もいるかもしれませんが、日本は同盟国で核保有国あるアメリカの“核の傘”によって守られています。また、多くのNATO加盟国や韓国が条約参加に後ろ向きなのも、それらの国がアメリカの核の傘に入っているからです。そのため、もし日本が核兵器禁止条約に参加してしまった場合、アメリカとの関係が悪化するリスクもある上、安全保障の協力を続けるにしても“例外なく核兵器を禁止する”という本条約の趣旨を守るなら「核の傘」を念頭にした日本の安全保障政策を根幹から見直す必要が出てきます。ただでさえ、日本の近隣諸国には中国・ロシアといった巨大な核保有国に囲まれている上、北朝鮮という従来の国際法すら無視して核兵器を作り他国を脅す異質な国家もあります。そして、これらの国とアメリカと同程度の友好関係を結ぶことはまず不可能であり、本条約に早期加入をしないことは極めて合理的で賢い判断だと思います。ちなみに「万が一日本が武力攻撃されてもアメリカが国際的な批判を覚悟で日本のために核兵器を使うわけがない」という人がいますが、武力衝突になれば少しでも核兵器が使用されるリスクがあると侵略国に思わせることが武力衝突回避につながるため、今のところ日本もアメリカも中国も本気で核戦争をしようとは思っていないと考えられます。

 

3.なぜ核兵器がなくならないのか

 では何故、核保有国ですら核戦争をしようと思っていないのに一向に核根絶が進まないのか話していこうと思います。不謹慎かもしれませんが核兵器の意義を言いますと、それは「抑止力」につきると思います。というのも、各国は核兵器の威力を十分に認識しているため、核兵器を使って侵略しようとは考えていないはずです(ただし北朝鮮はどう考えているか分からない)。ただ、核兵器の強大な威力ゆえに全ての国が永久かつ完全に手放してしまわない限りは、世界のパワーバランスが崩れてしまうリスクを否定できないため簡単に核放棄しないわけであります。簡単な例を挙げると、世界にA~Dの核保有国があってA~Cだけが条約を結び核兵器を根絶した場合、未だに核兵器を持っているD国が極端に力を持ちすぎることになるのです。太平洋戦争の際、核兵器が開発されてたてでしたが75年前の技術で作られた原子爆弾でさえ、たった1発で都市全体を一瞬で焼け野原にしました。核兵器分野においても、科学技術は進歩しているため当然現在の核兵器は使用すればより強大な威力があります(核兵器があるだけで大国すらも脅せるため北朝鮮は躍起になって開発している)。そのような悪魔的兵器であるため、現保有国及びその軍事同盟国は根絶したくても具体的な話になると及び腰になるわけであります。仮に、全ての国家が保有も含め例外なく禁止したとしても、開発技術は既にあるわけですから一国でも裏切ればその国は全世界を支配できると言っても過言ではありません。ある意味、絶えず裏切りを警戒して国家同士が疑心暗鬼に陥れば戦争リスクが高くなり平和が遠のくという矛盾が生じます。また、この世界では国家でもないテロリストが勢力を拡大しています。万が一テロリストが核兵器を持ったときにはー彼らは破壊活動しかしないのでーと考えると恐ろしくなります。

 

4.まとめ

 とはいえ、核兵器は人類を脅かす兵器であり“核なき世界”の理想を追い求めなければなりません。核兵器の開発という、自らの種を自らで絶滅させるような兵器を作ったのは人類最大の失敗であり愚かと言わざるを得ませんが、人類には他の生物にはない高い理性があります。時間はかかるとは思いますが、日本は唯一の被爆国として核兵器の恐ろしさを全世界に訴え、同じ志を持つ他国や様々な国の民間人と積極的に協力して何としてでも核兵器根絶を目指す取り組みをしなければいけません。ただ、安直に実効性の乏しい条約に署名して批准するような行為は単なるパフォーマンスであり日本の平和を崩すリスクのあるため避けなければならないと結論付けたいと思います。長文となりましたが、最後まで閲覧いただきありがとうございました。

 

※本記事を作成するにあたって参考にさせていただいた文献・サイト

www.unic.or.jp

www3.nhk.or.jp

地上波放送のネット同時配信~テレビの現状とNHKの在り方について~

近年、インターネットの普及に伴い若者を中心に“テレビ離れ”が進んできています。そこで注目されているのが、テレビ放送のインターネット同時配信です。そして、2019年5月には放送法が改正され、テレビ局はネット同時配信することが可能になりました。今回は、同時配信の課題とテレビの現状について考察していきます。

 

1、ネット同時配信の現状

 元々、ネット同時配信に前向きな姿勢を見せ放送法を所管する総務省にも同時配信解禁を訴えていたのはNHKでありました。そのため、解禁後に最も早く同時配信サービスを始めたのはNHKで、民放テレビ局では日本テレビのみがネット配信サービスアプリ「TVer」にてサービスを実施しています。他の大手テレビ局でも、ネット配信サービス開始に向けて検討を行っていますが、権利関係や導入に際するシステム構築費などがネックになってすぐには開始されないのだと思われます。

 

2,テレビの現状

 そもそも、ネット同時配信を開始したところで需要があるのかについて考察していきます。同時配信をした場合、視聴者のターゲットはテレビよりスマートフォンを見る機会が多い若者世代になります。実際、NHKの放送文化研究所は2010年に「16~29歳では「テレビ」の位置づけが低下している一方で,「インターネット」の位置づけが相対的に高くなっている」と指摘しています。また、総務省が行った調査でも若者・現役世代のテレビ接触率が減少していることが分かります。そのため、テレビ業界の中で「スマートフォン等でネットを通じて地上波放送と同時に配信すればテレビへの回帰が起きる」という意見が上がったのだと思われます。しかし私は、若者世代のテレビに対するイメージそのものが良くないと考えます。確かに、多くの人はインターネットの掲示板にある根拠に乏しい主張よりテレビの方が信用できるとは思っているでしょうし、実際その通りであります。ただ、SNSで「マスゴミ」といった既存のメディア批判する言葉があるのも事実であるし、インターネットの調査になりますが「ジャーナリスト」を信頼できないと答える人も多いのも事実であります。実際、ワイドショーや報道番組を見て“芸能人の不倫の話題なんてどうでもいい”や“ずっと政権批判をしているな”などと不満を持った人も一定数いるでしょう。

 

3,同時配信に需要はあるのか?

 2,ではメディア批判についてお話ししましたが、それでもテレビを情報源にする人は多くいると思います。もちろん、若者・現役世代でスマホ・パソコンに接する時間が増えたのは事実ですが、最近でもテレビから話題になったドラマ・アニメがありますし、テレビで問題提起されたことが国民の間で話題になって政策を動かしたこともあります(最近では、緊急事態宣言の発令など)。ただ、同時配信に需要があるのかは微妙なところであります。例えば、ニュースであってもYahoo!YouTubeを開けばしかるべき報道機関がタイムリーに記事や動画を配信していますし、ドラマやアニメも動画配信サービスで地上波放送の数日後には配信されます。また、現代人は男女ともに夜まで仕事をしていることが多いので、自宅で地上波を見るよりも後から録画や配信で見る方も増えてきているように感じます。インターネット調査ではありますが2019年に株式会社携帯市場が行った調査によると、ワンセグ機能がついた携帯電話を持つ人で実際に利用する人は26%となっており、ワンセグというかたちで、いつでもテレビを見られる携帯電話を持っていても利用率はあまり芳しくありません。恐らくそうしたデータが事実としてあるため、未だに多くのテレビ局が膨大なお金を投じてまで同時配信サービスを開始しないのだと思います。

 

4,NHKは同時配信を推進すべきか

 同時配信に最も力を入れているのはNHKでありますが、私はNHKが多額の投資をしてまで同時配信を広げるべきではないと考えます。なぜなら、NHKは民放テレビ局とは違い受信料によって運営される報道機関だからです。そして、NHK受信料は「いかなる勢力にも左右されない公平・公正な情報を伝える」という公益目的で、国民から事実上強制的に徴収することができます。つまり極端に言うと、NHKは消費者の需要にかかわらず多額の収益が保障されています。もし、実質的に公営企業のNHKが民放テレビ局に先んじて同時配信サービスを拡大した場合、純粋な民間企業である民放テレビ局を圧迫しかねません。その上、受信料は実質強制徴収であるため、徴収の目的である「公益に資する報道」に拘るべきであり、先進的なサービスは国民の大多数が求めない限りは実施せず、受信料を下げる努力をするべきだと思います。また、今回のテーマとは離れてしまいますが、最近のNHKは民放と同じく視聴率ばかりを気にして公益に資する報道の視点が欠けているようにも思えます。そうであるならば、いっそのことNHKスクランブル放送化にして、中立的報道の実現は民放テレビ局に譲り(民放にも正確で中立的な放送を求める放送法の適用対象である)、民放だけでカバーしきれない範囲の災害時の被害・避難情報の提供は政府の広報機能の強化で対応すべきと考えます。

NHKはインターネット活用事業を無制限にできるわけでなく、受信料収入の2.5%以内と定められています。

 

5,さいごに

 少し話が逸れましたが、まとめとして言いたいことは、同時配信してもテレビ回帰は進まないと考えます。理由としては、前述したようにインターネットでも既存のメディアと同程度の正確な情報を得られるようになったこと、また、若者世代を中心に娯楽ツールがテレビから有料動画配信サービスやYouTubeなどに移り変わっていることがあげられます。ただ現在においても、テレビはどの世代にも強い影響を与えており相対的に正確な情報が簡単に入手できることも事実なので、消費者の需要分析に強い民放のテレビ局が主導して、同時配信、ひいては将来のテレビの在り方を早急に検討すべきだと思います。最後まで閲覧していただきありがとうございました。

 

※記事作成にあたり参考にさせていただいた文献・サイト

https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2019pdf/20190910018.pdf (NHKによる常時同時配信の実施  参議院常任委員会調査室・特別調査室)

 

若者はテレビをどう位置づけているのか | 世論調査 - 放送に関する世論調査 | NHK放送文化研究所

 

携帯市場、スマホ・ガラケーの“ワンセグ”利用アンケート調査 ワンセグ利用者は3割未満 ワンセグ受信料が発生するなら買い替え意向6割、世代別で60代のみ4割 – ニュース 株式会社 携帯市場

 

https://www.soumu.go.jp/main_content/000384298.pdf (テレビ視聴の構造変化と今後の展望 総務省放送を巡る諸課題に関する検討会 説明資料)


www.nhk.or.jp